AIチャットサービスの中でもとくに有名なGeminiとChatGPTですが、どちらを選ぶべきか迷う方も少なくありません。GoogleのGeminiとOpenAIのChatGPTは、それぞれ異なる強みを持ち、使用感にも違いがあります。
本記事では、GeminiとChatGPTのスペックを比較したうえで、実際に使用して感じた違いをまとめました。GeminiとChatGPT、どちらが自身に合っているのかお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
GeminiとChatGPTのスペック・性能比較表
GeminiとChatGPTのスペックを比較しました。性能差やそれぞれの 最大コンテキスト長、料金、対応機能などを詳しく解説します。
| Gemini | ChatGPT | |
|---|---|---|
| 開発元 | OpenAI | |
| 有料サービス | Gemini Advanced | ChatGPT Plus／Pro／Team |
| 有料サービス月額料金 | 2,900円（1ヶ月無料） | Plus：20ドル／Pro：200ドル／Team：25ドル |
| 最上位AIモデル | Gemini 2.0 | GPT-4.5 |
| 最大コンテキスト長 | 2,000,000トークン | 128,000トークン |
| トレーニングデータ | 非公開 | 2023年10月 |
| 画像生成 | 対応（人物画像を除く） | 対応（DALL·E搭載） |
| 画像認識 | 対応 | 対応 |
| 動画認識 | 限定対応 | 非対応 |
| 音声認識 | 対応 | 対応（Whisper搭載） |
| 拡張機能 | Googleサービス（Gmail, Docs, Drive, YouTubeなど） | GPTs（カスタムAIモデル）、プラグイン対応 |
| スマホアプリ | Android／iOS | Android／iOS |
Geminiの強みは、Googleの技術を活かした検索機能や、Googleサービスとの連携です。ChatGPTは、画像生成や拡張機能（以前の「プラグイン」、今は「GPTs」）が充実しており、クリエイティブな作業の効率化に役立ちます。
ただ、GeminiもChatGPTも随時モデルを進化させています。
たとえばGeminiの場合、数年の間にバージョン1.0から1.5、2.0へと進化しました。また、同じGemini 1.5であっても、高度なタスクと精度に特化した「Pro」や速度と効率に特化した「Flash」といったニーズに合わせたモデルがあり、用途に合わせて使い分けができます。
| モデル名 | リリース時期 | 特徴・性能 |
|---|---|---|
| Gemini 1.0 | 2023年12月 | マルチモーダル対応、画像・音声・動画を統合的に処理可能 |
| Gemini 1.5 | 2024年2月 | 推論性能向上、長文脈対応 |
| Gemini 2.0 | 2025年2月 | 性能と速度の大幅向上、リアルタイム処理能力強化 |
一方、ChatGPTも近年3.5から4、4.5へとモデルを進化させてきました。
さらに同じGPT-4系列であっても、素早い応答とコスト効率を重視した「Turbo」（例：GPT-4 Turbo）や、画像や音声を含め幅広いデータを処理できる「Omni」（例：GPT-4o）など、ユーザーのニーズに合わせた派生モデルが開発されています。
| モデル名 | リリース時期 | 特徴・性能 |
|---|---|---|
| GPT-3.5 | 2022年11月 | 高速でコスト効率がいい、対話性能向上 |
| GPT-4 | 2023年3月 | マルチモーダル（画像・テキスト）、高度な推論能力 |
| GPT-4.5 | 2025年3月 | 画像・音声対応、高速化、高度な文脈理解と精度向上 |
それぞれのAIの強みを理解し、自身の用途に合うものを選びましょう。
GeminiとChatGPTを機能・料金・精度別に比較
ここからは、機能や料金プラン、精度といったGeminiとChatGPTの違いを次の項目で比較します。
- おもな機能
- 料金プラン
無料版の制限と、有料版限定の機能も解説しているため、課金するべきかどうかも含めて参考にしてください。
おもな機能
GeminiとChatGPTの基本的な機能は同じですが、対応できるデータ形式や得意分野に違いがあります。
Geminiの特徴は、テキストや画像、音声、動画を同時に処理できるマルチモーダル機能です。また、Google検索やYouTubeと連携し、最新情報を取得できます。
ChatGPTは、自然な対話や長文の要約が得意で、DALL·E 3を活用した画像生成も可能です。豊富なプラグインも利用可能で、幅広い用途に対応します。
無料版の制限
GeminiもChatGPTも、無料版では利用できる機能に制限があります。それぞれのおもな制限を次にまとめました。
| Gemini | ・最大32,000トークンまで利用可能 （verにより異なる） ・PDF、CSVファイルの読み込み時 ファイルのサイズや処理できる情報量に制限あり ・画像生成は人物画像に制限あり |
| ChatGPT | ・GPT-4oの使用回数制限（5時間あたり10回まで） ・画像生成は1日3枚まで |
画像生成を利用したい場合は、Geminiがおすすめです。 無料版でも複数枚の画像生成が可能で、イラスト作成で活用しやすいでしょう。
しかし、本記事執筆中に、ChatGPTの無料版でも画像生成の制限が緩和されるケースが確認されました。SNSなどで同様の事例は見当たらないため、一時的な仕様変更の可能性もあります。
有料版限定の機能
GeminiもChatGPTも、有料版ではより高度な機能を利用できます。それぞれのおもな機能を次にまとめました。
| Gemini | ・Gemini 2.0の利用 ・100万トークン以上のコンテキストウィンドウ ・新機能への優先アクセス ・PDF、CSVファイルの読み込み制限なし ・複数ファイルからのデータ分析、グラフ作成 ・プロンプト管理機能（Gems）の作成 |
| ChatGPT | ・ChatGPT 4.5の利用 ・画像生成枚数の制限引き上げ ・新機能のテスト・カスタムGPT（GPTs）の作成 ・Sora（動画生成）を制限付きで利用可能 |
有料版を活用すれば、より専門的な作業や高度なコンテンツ作成が可能になるため、利用目的に応じて検討するといいでしょう。
Geminiの有料版「Gemini Advanced」の無料版と有料版の最新の特典、料金については公式ページもご確認ください。ChatGPTの料金プラン、特典は配信元であるOpenAIの公式ページに掲載されています。
料金プラン
GeminiとChatGPTでは、料金プランにも違いがあります。Geminiの料金プランは次のとおりで、有料プランは一種類しかありません。
| Geminiのプラン | 料金 | 利用可能なモデル |
| 無料版 | 無料 | Gemini Pro Gemini 1.5 Flash Gemini 2.0 Flash Experimental |
| Advanced | 月額2,900円 （1ヶ月間無料トライアルあり） | Gemini Ultra Gemini 1.5 Pro Gemini 2.0モデル各種 ・Gemini 2.0 Pro Experimental ・Gemini 1.5 Flash ・Gemini 2.0 Flash Experimental |
現在1ヶ月間無料トライアルを実施しているため、無料プランとの違いを体感してみてもいいでしょう。
ChatGPTの料金プランは複数用意されており、プランにより利用可能なモデルや制限が異なります。
| ChatGPTのプラン | 料金 | 利用可能なモデル |
| 無料版 | 無料 | GPT-4o mini GPT-4o（制限あり） |
| Plus | 月額20ドル | GPT-4o mini GPT-4o（制限引き上げ） GPT-4.5 OpenAI o1-mini（制限あり） |
| Pro | 月額200ドル | GPT-4o mini GPT-4o、GPT-4.5 GPT-4OpenAI o1 OpenAI o1-mini OpenAI o1 pro mode |
| Team | 月額25ドル（1人あたり） | GPT-4o miniGPT-4o（Plusより高い制限引き上げ） GPT-4 OpenAI o3-mini OpenAI o3-mini-high |
Proプランでは、すべてのモデルを無制限で利用可能です。Teamsは2名以上で利用したい方向けのプランで、年単位で課金されます。
ChatGPTには、無料トライアルが提供されていません。無料プランの利用頻度が高く、制限が気になる場合に有料プランを検討するといいでしょう。
GeminiとChatGPTを使用して比較
AIチャットサービスを選ぶ際に重要なポイントとして、次の項目でGeminiとChatGPTを比較しました。
- 文章生成機能
- 画像生成機能
- 画像認識機能
- 情報の正確さ
- コード生成
無料プランでも多くの機能を利用できるため、まずは無課金で試したい方も多いでしょう。そこで、実際にGeminiとChatGPTの無料版を使用し、それぞれの性能を比較した結果を紹介します。
文章生成機能
GeminiとChatGPTの文章生成機能を比較するために、取引先から入金がない場合の催促メール作成を指示しました。
Geminiは「さて」から話が始まるため、読み手によっては高圧的に感じる可能性があります。入金の催促も遠回しで、意図が伝わりにくいと感じました。
ChatGPTは表現が柔らかく、相手に嫌な印象を与えにくい文章を生成しました。催促の意図を伝えつつも、礼儀正しく配慮された表現で、実用性が高いといえるでしょう。
上記の結果から、文章生成機能はChatGPTのほうが優秀だと判断できます。催促のような繊細なコミュニケーションでは、相手の心理に配慮した文章を生成できるChatGPTがおすすめです。
また、英語でも同様で、Geminiに英訳を依頼すると正確に意図を伝えようとしているものの、少し丁寧すぎたり、逆に直球すぎる文章だったりしました。ChatGPTの方が気遣いを感じられる、シーンに合った英文を早く生成してくれます。
画像生成機能
GeminiとChatGPTの画像生成機能を比較するために、恋人からの連絡を待つ女性の画像作成指示を出しました。
Geminiは少し前まで人物画像の生成ができませんでしたが、現在は生成が可能です。ただし、不適切なコンテンツと判断された場合には制限がかかります。
今回の場合、不安そうな表情は指示のとおりですが、連絡を待っているというより、連絡を取ろうとしている動作に見えます。
ChatGPTも、ほぼイメージどおりの画像を生成しました。希望としてはもう少し悲しげな表情がよかったものの、指示が曖昧だった点を考慮すると合格点です。
動物の画像生成も比較しました。お題は、ブリティッシュショートヘアとシャルトリューの横長画像です。どちらもグレーの毛色で似た外見を持つ猫種のため、それぞれの特徴を正しく捉えられるか検証しました。
なお、シャルトリューは筋肉質で、目の色はゴールド系のみです。ブリティッシュショートヘアの目の色はブルー・ゴールド・グリーン・カッパーなどで、筋肉質ながら全体的に丸みがあります。
Geminiは、1回で希望に近い画像を生成しました。左がブリティッシュショートヘア、右がシャルトリューだと判断できるほど、特徴が正しく反映されていて、画像サイズも横長でした。
ChatGPTでは、1匹違う猫種が生成されるミスが発生しました。修正指示により改善されたものの、1回で希望どおりの画像を生成したGeminiに軍配が上がります。
人物画像を生成するならChatGPT、特徴を反映させた動物画像を生成するならGeminiがおすすめです。
画像認識機能
画像認識機能の比較として、鳥居の写真から徳島県鳴門市の大麻比古神社を特定できるかを検証しました。
Geminiは、画像のみでは場所を特定できませんでした。県名のヒントにより正解したものの、複数の選択肢を提示するため、どれが正しいのか判断に迷う可能性があります。
ChatGPTも、県名のヒントにより正解にたどり着きました。Geminiと違い正解の神社のみを提示するため、利用者が迷うことはありません。「情報源」をクリックすれば関連サイトも確認できます。
ただし、Google画像検索では一発で正解が出たため、AIの画像認識精度はまだGoogle検索には及びません。
次に、手書きの文字を正しく認識できるかを検証しました。「15:00ミーティング、17:15TEL」とマウスで手書きし、画像として読み取らせます。
GeminiもChatGPTも正しく読み取れたため、画像のサイズを小さくして再度検証します。
Geminiは「19:13TEL」と誤認識しましたが「TEL」は正しく解析されていました。
ChatGPTは「15:00チェックイン クローズ7:00」と回答し「15:00」を正しく認識しています。しかし、1回で正確な結果が出なかった点を考慮すると、文字認識の精度はGeminiのほうが優れています。
総合的に見ると、画像の内容を認識する精度はChatGPTが上ですが、文字認識はGeminiのほうが強いといえます。
情報の正確さ
情報の正確さを検証するために、映画「あん」の内容を300文字で要約するように指示しました。
Geminiが生成した内容に誤りはなく、生成された文章だけでストーリーを理解できます。文字数は指定よりも多い413文字ですが、画面下部の「⋮」をクリックすると内容の正確性を確認できる点は高評価です。
ChatGPTも内容は正確でしたが、文字数は指定よりも少ない243文字です。なお、モデル切り替えボタンでWeb検索を活用して回答を再生成すると、内容の精度が向上し、文字数も279文字になりました。
情報の正確さ自体に大きな違いはなく、どちらも問題なく要約を作成できます。正しい情報を参照しながら要約を作成したい場合は、Geminiの「⋮」から回答を再確認する機能を利用すると安心です。
GeminiとChatGPTでは、トレーニングデータの範囲が異なります。
Geminiのトレーニングデータは非公開ですが、Google検索と連携しており、常に最新の情報を取得できる点が強みです。
ChatGPTのトレーニングデータはモデルごとに異なりますが、GPT-4oは2024年6月までのデータを学習しています。最新情報の取得は、ブラウジング機能やプラグインを利用すれば対応可能です。
最新の情報を効率よく取得するならGeminiが便利ですが、ChatGPTも設定を工夫すれば最新の情報を活用できます。
コード生成
GeminiとChatGPTのコード生成、プログラム作成について比較しました。
今回指示したコードは画面中央に「こんにちは！」と表示するという簡単なものですが、Geminiは解説と使い方の説明もありました。作成されたページをブラウザで開いても、問題がないと分かります。
つづいてChatGPTでもコードを作成し、ブラウザで開きました。
ChatGPTが生成したコードは、Geminiと違って使い方や解説はないものの、例題に対して正確かつ適切、シンプルでした。表示も問題なく行われています。
どちらも正しくコード生成ができましたが、Geminiは、HTMLとCSSを分けて構成し、ボックスデザインを適用することで、よりスタイリッシュな表示を実現しました。一方、ChatGPTはシンプルなインラインCSSを採用しているため、コードが簡潔でした。
丁寧で正確に指示を実行しようとするならGemini、意図を読んで実行してほしいときはChatGPTの方がいいと言えます。
Geminiがおすすめの人
Geminiは、Googleのサービスと連携しながらAIを活用したい方に最適です。Google検索・YouTube・Googleマップなどと連携し、最新の情報を取得しながら作業を進められます。
ほかには、Googleドキュメント内のデータ検索、表を生成してGoogleスプレッドシートにエクスポートなども可能です。作業効率の向上を目的とする場合は、Geminiが役立つでしょう。
Geminiは、事実確認をしながら情報収集をしたい方にも適しています。回答の正確性を再確認する機能があるため、効率よく情報をチェックできるでしょう。
ChatGPTがおすすめの人
ChatGPTは、豊富なプラグインを活用しながらAIを使いたい方に適しています。自身の用途に合った独自のGPTs（カスタムGPT）を作成できるうえに、ほかのユーザーが作成したGPTsも利用可能です。
自然な文章を生成したい方にも、ChatGPTは適しています。メールの文章作成はもちろん、キャッチコピーや商品説明文の作成にも役立つでしょう。
また、ChatGPTは英語にも対応しているため、英文メールの作成や英会話の練習にも活用できます。
オリジナルの画像を作成したい方にも、ChatGPTはおすすめです。指示を出すだけで背景付きの高品質な画像が生成されるため、SNSのプロフィール画像やブログのアイキャッチにも活用できます。
ClaudeやCopilotやPerplexityとの簡易比較
近年、GeminiやChatGPTのほかに、ClaudeやCopilot、Perplexityなどが生成AIとして知名度を上げています。それぞれの特徴を次にまとめました。
| Claude（Anthropic社） | ・人間のような自然な対話ができる ・顧客対応や社内の問い合わせ対応に適している ・長文の作成や大規模なドキュメントの要約も可能 |
| Copilot（Microsoft） | ・プログラミングや文書作成に特化している ・コードの補完機能があり、エラーを減らせる ・Microsoft 365と統合している |
| Perplexity（Perplexity AI社） | ・Web検索を行い、最新情報をもとに回答を生成 ・出典付きの回答を提供 ・最新ニュースや業界動向の調査に適している |
ビジネスシーンでの対話を重視するならClaude、プログラミングのサポートが必要ならCopilot、最新情報の収集やデータリサーチをするのならPerplexityがおすすめです。
一方で、幅広い用途に対応できるAIを希望する場合は、GeminiやChatGPTが適しています。
GeminiとChatGPTの今後の展望
AI技術は日々進化を続けており、GeminiとChatGPTも今後さらなる発展が予想されます。それぞれの最新動向や今後の方向性を見てみましょう。
Geminiは、強みであるGoogleサービスとの連携をさらに深めつつ、Gemini1.5、Gemini2.0を含めたGeminiシリーズの性能向上が見込まれています。加えて、Geminiのプロンプト管理機能「Gems」の強化が進み、ビジネスシーンや個人のニーズに応じた柔軟な活用が可能になると考えられます。
ChatGPTは、GPT-4.5以降の次世代モデルの開発が進み、より直感的で高精度な対話が実現される見込みです。さらに、カスタムGPT（GPTs）や動画生成AI「Sora」との連携強化により、マルチモーダルAIとしての進化が加速しています。
GeminiとChatGPTは互いに競い合うように進化しており、一方にしかなかった機能が、もう一方にもすぐ追加されることがよくあります。常にアップデートが繰り返されているため、最新情報をこまめにチェックすることが重要です。
まとめ：最新の情報収集ならGemini、複雑な文章作成ならChatGPT
GeminiとChatGPTは、それぞれ異なる強みを持つため、自身の用途に合わせて選びましょう。
最新の情報を収集したい場合は、Google検索と連携しているGeminiがおすすめです。情報の正確性を確認する機能も備えているため、再検索の手間を省けます。
人間らしい自然な文章を作成したい場合は、高度な文章生成が可能なChatGPTがおすすめです。豊富なプラグインの活用により、GPTのカスタマイズも可能で、より複雑なテキストの作成にも対応できます。
GeminiとChatGPTは、どちらも無料で利用可能です。迷った場合は両方試し、自身にとって使いやすいほうを選ぶといいでしょう。
